新規事業を立ち上げる際、成功を左右するのは立ち上げメンバーの選定や構成です。本記事では、新規事業立ち上げメンバーに求められる役割分担から、成功するチームの選び方、避けるべき人材の特徴まで、実務に即して詳しく解説します。
新規事業の立ち上げでは、想定外の問題が頻繁に発生します。過去の実績やデータが通用しないため、日々試行錯誤を繰り返す不確実な環境下において、事業が生き残れるかどうかはメンバー間の密な意思疎通にかかっています。
どんなに高いスキルを持っていても、周囲と連携できない人材では危機を乗り越えることはできません。迅速に情報を共有し、チーム全体で解決策を模索できる十分なコミュニケーション能力を持つメンバーを選ぶこと。互いに協力し合える関係性を築ける人材のアサインこそが、事業が立ち枯れずに生存するための第一条件なのです。
新規事業において、意思決定やノウハウが特定の個人に依存してしまうと、失敗のリスクが跳ね上がります。一人の判断だけで進めると視野が狭くなり、その人物が離脱した瞬間にプロジェクト全体が頓挫する「死の谷」に直面するためです。
したがって、チーム全体で知見を共有し、組織として機能する体制を作れる人材を集めることが不可欠です。互いの専門性を活かして死角を補い合い、リスクを分散できるメンバー構成にできるか。この初期段階における「誰を選ぶか」という人選の精度が、新規事業の生存率を劇的に左右する最大の要因となります。
プロジェクトマネージャーは、新規事業全体をまとめる総責任者です。事業の立ち上げから完了まで、すべての責任を担う重要な役割を果たします。具体的には、事業全体の進捗管理、人員・予算・納期・品質・リスクなどの管理を行い、プロジェクトを成功に導きます。
この役割には、事業全体を俯瞰できる広い視野と経験、決断力、経営能力が求められます。また、社内外の関係者との交渉力や提案力、高いコミュニケーション能力も必要となります。経営層への報告や他部門との調整など、多方面にわたる業務を担うため、プロジェクト成功の要となる存在です。
プロジェクトリーダーは、新規事業における各担当部門の最高責任者として機能します。担当領域のタスク・スケジュール管理、問題解決、チームへの指示、他領域との調整や連携などを担います。プロジェクトマネージャーの方針を受けて、実務レベルで具体的な施策を推進する役割です。
これらの業務を実施しながら、自分自身もプロジェクトの業務に参加するため、実務能力と強いリーダーシップの両方が求められます。メンバーを管理・牽引しながら、自らも手を動かす実行力が必要となる重要なポジションです。
プロジェクトメンバーは、新規事業におけるさまざまなタスクを実行する実働部隊です。実務を担当するため、チームの中で最も人数が多くなるのが一般的です。タスクの実行スキルを持った人材や、協調を重視して連携のとれる人材が望ましいでしょう。
プロジェクトメンバーの人数は、1つのチームにつき6人以内が理想とされています。これ以上の人数になると、コミュニケーションコストが増大し、意思決定のスピードが低下する恐れがあります。6人を超える場合は、チームを分けて、それぞれにリーダーを配置することで、効率的な運営が可能になります。
ファシリテーターは、プロジェクトマネージャーを支える補佐的な存在として、プロジェクトの円滑な進行をサポートします。プロジェクトマネージャーと同様に、高いコミュニケーション能力と交渉力が求められる役割です。
特に、組織を横断してチームを編成する規模の新規事業において必要とされます。各組織との調整や、問題が発生した時に、プロジェクトマネージャーだけでは対応しきれないケースが発生するためです。ファシリテーターを置くことで、プロジェクトマネージャーの負担を軽減し、より戦略的な業務に集中できる環境を整えることができます。
新規事業では、前例のない課題に直面することが日常的です。そのため、物事を冷静に捉え、論理的に分析できる能力が不可欠となります。感情論や曖昧な主観ではなく、事実に基づいて課題を整理し、解決策を導き出す力が求められます。
特に、他部門や外部パートナーとの連携では、論理的な説明ができなければ協力を得ることが困難です。5W1H思考を用いて問題の本質を明らかにし、適切な改善策を見出せる人材は、チームにとって貴重な存在となります。新規事業には熱意も必要ですが、それを論理的に裏付けられる思考力があることで、周囲の共感と支援を得やすくなるのです。
新規事業の立ち上げでは、計画通りに進まないことが当たり前です。市場の変化や想定外のトラブルに対して、指示を待たずに自ら動ける主体性が重要になります。自律的に行動できるメンバーが多いチームは、生産性が20%以上向上するというデータもあり、主体性の高さが事業成長に直結します。
また、変化を前向きに捉え、新しい知識を学びながら適応できる柔軟性も欠かせません。GoogleやFacebookなどの成功企業は、適応力の高い人材を重視しており、それが成功の鍵であると公表しています。変化に対応するためには、新しい情報を素早くキャッチし、それを事業に活かせる力が求められます。このような人材がチームにいることで、困難な状況でも迅速に軌道修正が可能となります。
新規事業では、チーム内だけでなく、他部門や外部パートナーとの連携が不可欠です。そのため、リーダーの立場でなくても、積極的に意見を交換し、周囲を巻き込める能力を持つ人材が求められます。相手の意見を尊重しつつ、自分の意見も論理的に主張できるバランス感覚が重要です。
実際、スタートアップの成功事例を分析すると、創業メンバー間のコミュニケーションの良さが、事業の成否を分ける要因となっていることがわかります。情報共有を積極的に行い、チームの進捗を把握できる人、問題発生時に冷静に議論して解決策を見出せる人がいることで、プロジェクトは円滑に進行します。決断を迫られる場面も多いため、責任を負えるだけでなく、判断力を備えた人材が理想的です。
新規事業は、失敗を繰り返しながら成功に近づいていくプロセスです。そのため、失敗を恐れずに挑戦し続ける我慢強さと、困難な状況でも諦めない粘り強さが必要となります。Appleの創業者スティーブ・ジョブズは、「成功する企業と失敗する企業の違いは、どれだけ粘り強く挑戦を続けるかにかかっている」と述べています。
また、新規事業の推進には、ビジョンに対する情熱と献身が求められます。自ら主体的に動き、目標に対する強い意欲を持つことが、チーム全体のモチベーションを引き上げます。成果を出す意識が強い人は、困難な状況でも諦めず、改善を重ねながら目標を達成するための努力を惜しみません。このような人材をチームに加えることで、新規事業の成功確率が大幅に向上します。
新規事業では、完璧を追求するよりも、スピード感を持って仮説検証を繰り返すことが重要です。しかし、完璧主義の人は100点を目指すあまり、意思決定が遅れたり、完了基準が高すぎてアウトプットが出てこなかったりする傾向があります。
例えば、プロトタイプの段階で「仕様が曖昧だから出せない」とリリースを先延ばしにしたり、社内プレゼン資料に過剰な時間をかけてしまったりします。新規事業では「まず出して検証する」ことが求められますが、完璧主義の姿勢はスピードを阻害し、市場投入のタイミングを逃す原因となります。試行錯誤を前提とした環境では、80点の完成度でも素早くリリースできる人材の方が価値があるのです。
保守的な思考の持ち主は、新しいことや変化を好みません。前例がないという理由で新しい挑戦にブレーキをかけたり、失敗するリスクが大きいという理由で慎重になりすぎたりする傾向があります。「社内で前例がない」「品質保証ができない」といった理由で、新技術や新手法を却下してしまうケースが典型的です。
新規事業開発では、前例のない取り組みを積極的に試すことが成功への近道です。しかし、変化に柔軟でない姿勢は初速を大きく妨げる要因となり、競合他社に先を越される原因にもなります。既存事業での成功体験が強い人ほど、この傾向に陥りやすいため、新規事業のチームには不向きと言えるでしょう。
他責思考を持つ人も、新規事業には適しません。課題やミスが起きた際に、「上司の指示通りに動いたのに」「あの部署が協力しないせいだ」と考え、責任を自己ではなく外に向ける傾向があります。このような姿勢は、チーム内の信頼関係を損ね、問題解決を遅らせる要因となります。
新規事業では、自ら意思決定し、周囲を巻き込みながら進めることが求められます。問題が発生した際も、「どうすれば解決できるか」を主体的に考え、行動できる人材が必要です。他責思考の人がチームにいると、チーム全体の士気が下がり、建設的な議論ができなくなる恐れがあるため、メンバー選定時には注意が必要です。
新規事業立ち上げの第一歩は、ビジョンと目標の明確化です。これはプロジェクトの方向性を決める根幹となる部分であり、メンバー選びの基準にもなります。SMART原則(具体的・測定可能・達成可能・関連性のある・時間制限のある目標設定)を用いると効果的です。
例えば、「売上を伸ばす」という曖昧な目標ではなく、「6ヶ月以内に月間売上500万円を達成する」といった具体的な目標を設定します。チーム全体の目標と個々のメンバーの役割に対する目標を明確にすることで、共通の理解が生まれ、適切な人材像も見えてきます。目標が明確であればあるほど、必要なスキルや経験を持つ人材を選定しやすくなるのです。
ビジョンと目標が明確になったら、次にプロジェクトを成功させるために必要なスキルと役割の設定を行います。マーケティング、開発、営業など、事業展開に必要な各分野のエキスパートが必要かを洗い出します。専門分野の知識だけでなく、創造性や問題解決能力などのソフトスキルも併せて考慮することが重要です。
各役割に必要なスキルセットを明確にすることで、必要な人材像を具体的に描くことができます。例えば、プロジェクトマネージャーには経営能力と交渉力、プロジェクトリーダーには実務能力とリーダーシップ、メンバーには協調性と実行力といった具合に整理します。この段階でしっかりと定義しておくことで、次のステップである候補者選びがスムーズになります。
スキルと役割が明確になったら、候補者探しと評価のフェーズに入ります。人材探しには複数のアプローチがあり、社内公募、部門からの推薦、外部人材の活用などの方法を組み合わせることが効果的です。社内からの抜擢は、企業文化への理解がある点でメリットがあります。
一方、社内に適切な人材がいない場合は、外部のプロ人材や業界のネットワークを活用することも選択肢です。選定プロセスでは、面接やスキルテスト、ケーススタディなどを用いて対話を行い、候補者が求めている役割に合うかどうかを判断します。専門性だけでなく、新規事業に対する情熱や適応力も確認することが大切です。
候補者のスキルが十分でも、企業文化やチームとの相性が合わなければ、プロジェクトはうまく機能しません。カルチャーフィットとチーム相性の確認は、長期的な成功のために欠かせないステップです。企業やプロジェクトにおける価値観、使命、ビジョンを明確にし、それに合う候補者を選ぶよう努めましょう。
メンバー選定の段階で、各メンバーがお互いをよりよく理解し、効果的に協力できるようにするため、軽いディスカッションなどを行い、価値観や目標について話し合う機会を持つことが推奨されます。チームダイナミクス(チームの動きやエネルギー)がうまく合っていると、チームは強く、目標に向かって進むことができます。
メンバー選定は、選んで終わりではありません。最後のステップは、継続的な評価とフィードバックのプロセスを構築することです。定期的にメンバーの進捗とパフォーマンスを評価し、必要に応じてフィードバックを行うことで、チームの成長と個々の成長を促します。
リーダーが各メンバーと1on1を通じて対話を重ねたり、プロジェクトメンバーがお互いを評価する「360度フィードバック」などの方法を用いることも効果的です。新規事業は計画通りに進まないことが多いため、定期的に評価と調整を行うことで、プロジェクトが目指すゴールにたどり着けるよう軌道修正していきます。
社内に新規事業立ち上げの経験者がいない場合、外部から経験者を採用する方法が効果的です。新規事業立ち上げの経験者が1人でもいると、チームはまとまりやすくなり、目標までのアプローチ方法や問題発生時の対処法など、実践的な知見を得ることができます。
経験者の話には説得力があるため、他のメンバーも耳を傾けやすく、チーム全体の方向性が定まりやすくなります。未経験者のみのチームでは、自信を持ってアプローチができない恐れがありますが、経験者がいることでプロジェクトの進行スピードが加速します。実際、成功しているスタートアップ企業の約80%が、創業メンバーに業界経験者を含めているというデータもあり、経験者の存在が成功率を高める要因となっています。
スピード感を重視する場合や、特定の専門スキルが必要な場合は、外部のコンサルタントや副業・フリーランス人材を活用することが有効です。これらのプロ人材は、豊富な経験とスキルを持ち、即戦力として機能します。コストはかかりますが、短時間で必要なノウハウや経験を得られる点が大きなメリットです。
業務委託契約を結ぶことで、必要なタイミングで稼働量を調整しながら業務を任せられるため、柔軟性が高いのも特徴です。既存社員が新規事業に専念できるよう、既存事業に外部人材をアサインするという活用方法もあります。また、新規事業全体をコンサルティングしてもらうことで、手探り状態を避け、計画的にプロジェクトを進めることが可能になります。
時間はかかりますが、社内で人材を育成する方法も重要な選択肢です。新規事業の立ち上げは、従業員が経験を積む貴重な機会であり、将来の幹部候補を育てる絶好の場となります。講習やテキストでは学べない実践的な経験を積むことで、次世代のリーダーを育成できます。
新規事業を任せられる人材を社内で育成できれば、他の新規事業でも活躍が期待でき、企業にとって大きな資産となります。新規事業は継続して取り組む必要があるため、中長期的な視点で人材育成に投資することは、企業の成長戦略として非常に有効です。優秀な従業員を早い段階から新規事業に参加させることで、多様な経験を通じて成長を促すことができます。
新規事業の立ち上げにおいて、適切なメンバー選びは成功の鍵を握る最も重要な要素の一つです。本記事で解説してきたように、チーム構成が事業の成長スピードや成功率を大きく左右します。プロジェクトマネージャー、プロジェクトリーダー、プロジェクトメンバー、ファシリテーターといった役割を明確にし、それぞれに適した人材を配置することが第一歩となります。
新規事業の立ち上げは、不確実性が高く、多くの困難が伴います。しかし、適切なメンバーが揃い、チーム一丸となって目標に向かうことができれば、その困難を乗り越え、成功へと導くことができるのです。最適な人材の選定は単なる一時的なタスクではなく、事業成長の根幹となるプロセスであることを忘れずに、戦略的かつ注意深く進めていきましょう。
ここでは、「仕組み・制度化」「内製化」「低コスト」とそれぞれの目的別におすすめの新規事業コンサル・支援会社をご紹介。それぞれの強みを裏付ける成功事例もあわせてチェックしてみてください。
全メンバーが新規事業経験者
「実践知」を基に設計を支援※1
(従業員数:18,323名)
事業として形にするための仕組み化が
不十分で、事業化に結びつかない…。
「ステージゲート」の手法でヘルスケアの新規事業を立ち上げ、同社初のカーブアウトに成功
21種のフレームワークで
新規事業の知見を高める※2
(従業員数:100名〜499名)
4つの事業が独立し、プロダクトマーケットフィットの現在地がわからず、
優先順位も曖昧だった。
5万円~とコストを抑えた
小規模事業者向けのプランあり※3
(従業員数:数10名)
経営者の“右腕”が不在で、新規事業に
ついて相談できる相手がいない…。